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= 竹ノ山 の タケノコ 通信 =
〔第54号 2018年2月8日〕


今月の話題 「言語と言語行動」

  第53号1月のチャレンジは、「言語と言語行動」の「転移」について考えてみようという趣旨でした。「転移」というのは、清水(2009)によると、もともと心理学の用語で「ある問題状況で使う知識やスキルを別の問題状況に持ち込むこと」(Zegarac & Pennington 2000)です。チャレンジ問題は(1)、(2)の2つありました。文法や語彙や音声に関わる転移を「言語転移」と言いますが、(1)は文法に関わる転移です。

(1)インドネシアの留学生の作文に「家の私はジャカルタにあります。」と書いてありました。これはどう言いたかったのでしょうか。また、なぜこのような言い方になったのでしょうか。

  (1)で学習者が言いたかったのは、お察しのとおり「私の家」です。では、なぜ「家の私」のような言い方が出てくるのでしょうか。「母語」、「目標言語」、「中間言語」という点から考えてみます。「目標言語」というのは、その人が目標として学習している言語です。みなさんも、英語を「目標言語」として学習していると思います。その場合、母語は「日本語」、目標言語は「英語」です。日本人にとって「私の部屋」から「my house」を生成するのはそれほど難しくありませんね。
  インドネシア語では、「私の家」は「rumah saya」と言います。rumahは「家」で、sayaは「私・私の・私を」に当たります。この学習者は日本語の所有格を「の」で表すことは覚えていて、インドネシア語の語順で「家の私」としたのでしょう。初級のインドネシア語話者にはときどき見られます。このように、母語の言語の特徴が目標言語に表れることを「言語転移」と言います。そして、「rumah saya」のような学習者が作り出した習得途上の言語を「中間言語」と言います。つまり、「母語」と「目標言語」の間にある言語という意味で、「中間言語」は誤りではありません。学習が進めば「私の部屋」と言えるようになる可能性は大いにあります。これを整理すると、以下のようになります。

「言語転移(文法)」
【母語】       【中間言語】      【目標言語】
       
・日本人の英語習得の例
「私の家」     「my house」  「my house」

・インドネシア人の日本語習得の例
「rumah saya 」   「家の私」  「私の家」

  チャレンジ問題の(2)は以下でした。

  アメリカへ向かう飛行機の中で、日本人の女性がキャリーバッグを棚に上げようとしていたら、アメリカ人の男性がさっと飛んで来て上げてあげました。女性は「I’m Sorry」と言って恐縮していましたが、男性はちょっとびっくりしていたようです。なぜ、男性はびっくりした様子を見せたのでしょうか。

  日本人女性は、お礼を言うのになぜ「I’m sorry」と言い、それに対してアメリカ人男性は驚いた様子を見せたのでしょうか。
  みなさんは、「すみません」をどのようなときに言いますか。
  1つは「謝罪」です。「ごめんなさい」と同じような意味で使います。また、意外とよく使うのは「すみませ〜ん」のような呼びかけです。そして、忘れてならないのが「感謝」です。「ありがとう(ございます)」の代わりです。何かをしてもらって、たぶんお手数をおかけして申し訳なかったという意で「すみません」と言うのだと思います。確かに、消しゴムを落として、それを隣の人が体をかがめて拾ってくれたとき、「すみません。ありがとうございます。」と言いますね。このように、日本語では、「謝罪」と「感謝」は心理的にも重なって使われることが多いようです。
  今回の場合、日本人女性は荷物を上げてくれた労に対して「すみません」と反応し、「I’m sorry」と言ってしまったのだと思います。しかし、英語では「謝罪」は「I’m sorry」、「感謝」は「Thank you」と明確に区別するようです。ですから、アメリカ人の男性がちょっとびっくりしたわけです。このような言語行動(発話行為)に関する「転移」を「語用論的転移」と言います。以下にまとめておきます。
  
「語用論的転移」
・日本人の英語習得の例

【母語】                【中間言語】              【目標言語】
「すみません」(感謝)   「I’m sorry.」(謝罪)  「Thank you.」(感謝)

  この他にも「言語転移」は多くありますし、「語用論的転移」も、まだ他にあるかもしれません。何か気がついたことがあれば、本メールにいつでも送ってください。

【参考文献】
清水崇文(2009)『中間言語語用論概論 第二言語学習者の語用論的能力の使用・習得・教育』スリーエーネットワーク

(日本語学科 田中真理)


今月のチャレンジ 「形態素解析を使ってみよう」

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  日本語の文章は分かち書きされていないので、自動翻訳などの自然言語処理を行うためには「語(形態素)」を切り出す必要があります。ここでは、工藤拓氏(奈良先端大学院大学出身、現Googleソフトウエア勤務)が開発した形態素分析器MeCab(http://taku910.github.io/mecab/ 2018年1月22日確認)を用いて日本語の文章を解析してみましょう。
夏目漱石の「坊ちゃん」の冒頭文「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」をMeCabで分析すると、以下のような分析結果が得られます。

  親譲り/の/無鉄砲/で/小/供/の/時/から/損/ばかり/し/て/いる/。

  上の結果では「親譲り」と「無鉄砲」は語として認識されましたが、「小供」はできませんでした。これを改善するためはどうしたらいいでしょう。効果的な方法を以下の3つから選んでください。
1) 名詞が連続するときは「複合名詞」を作ると解析ルールに書き込む
2) システムが参照する辞書に「小供」を登録しておく
3) システムの解析結果を人間が目で確認して、必要な修正を行う

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