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= 竹ノ山 の タケノコ 通信 =
〔第53号 2018年1月11日〕


今月の話題 「あいまい」なことば」

  前号の質問は、ネットニュース掲載記事の文章のまぎらわしさについてでした。

「公営テニスコート、市職員が「無料で独占使用」 ― 大阪府高槻市内にある府のテニスコートを市職員が2008〜12年、無料で独占使用し続けたとして、市議らが利用料約2000万円を職員側に請求するよう府に求めた訴訟の控訴審判決が30日、大阪高裁であった。中本敏嗣裁判長は違法な独占使用があったとして請求を棄却した1審・大阪地裁判決を変更、116万円を請求するよう府に命じた。」〔以下略;Niftyニュース2017年12月01日(読売新聞提供)〕

【質問1】(1)「市議らが利用料約2000万円を職員側に請求するよう府に求めた訴訟」が「府が請求するよう、市議らが求めた」と読めるように(としか読めないように)するにはどうしたらいいか
  答えは簡単、「市議らが、」と「、」を打てばいいでしょう。さらに、語順を変えて、「市議らが、府に(対して)」のようにすればよりはっきりします。
  「市議らが、府に対して、利用料約2000万円を職員側に請求するよう求めた訴訟」

【質問2】(2)「中本敏嗣裁判長は違法な独占使用があったとして請求を棄却した1審・大阪地裁判決を変更」で、「1審・大阪地裁判決が請求を棄却したのに対して、中本敏嗣裁判長が違法な独占使用があったと認めて、1審判決を変更した」とわかるようにするにはどうしたらいいか
  これも、まず、「中本敏嗣裁判長は違法な独占使用があったとして、」と「、」を入れればほぼ解決します。さらに、「市議らの請求」のように補えばだいたいはっきりするでしょう。
  「中本敏嗣裁判長は、違法な独占使用があったとして、市議らの請求を棄却した1審・大阪地裁判決を変更」

  このようにある表現が二つ以上の意味に解釈できる状態を、言語学では「あいまいambiguous」といいます。一般用語としての「あいまい」より、少し限定された使い方になります。
  「あいまい」な表現は、実はかなり多く見られます。

▼「エコ弁当容器」(本学の某会議で配られた弁当の容器の表示)
  「エコ」なのは、弁当なのか、容器なのか「あいまい」です。たぶん容器のほうでしょう。

  このように、三つ以上の要素が複合語を作る場合、前の要素がどこまでにかかるのかわかりにくいというタイプの「あいまいさambiguity」があります。他にも、「栗蒸し羊羹」は蒸し羊羹に栗が入っていると思われますが、「蒸し栗羊羹」は栗の入った羊羹を蒸したもの、蒸した栗が入った羊羹のどちらかわかりません。高速道路の標識は「自動速度取締中」「速度自動取締中」のどちらが適切でしょうか。

▼セグウェイ (Segway® Personal Transporter, PT) とは、アメリカの発明家ディーン・ケーメンを中心に開発され、Segway Inc.から発売されている電動立ち乗り二輪車。(Wikipedia)
▼三重県志摩市で来年開かれる主要国首脳会議(サミット)や2020年東京五輪を控え、警視庁は31日、羽田空港の警備で使う立ち乗り電動二輪車「セグウェイ」を公開した。(2015年9月1日日本経済新聞インターネットサイト)
  これは、「電動立ち乗り二輪車」「立ち乗り電動二輪車」どちらでも、「あいまい」ではないでしょう。

▼「インフルエンザの季節です 人込みを避けて予防接種を受けましょう」(昨年の冬、本学の学生食堂でテーブルに置かれていたメッセージ)
  「予防接種をするときは人込みでしないように」という意味ではないと思われます。

▼「井形学長の脳死に関するコメントが掲載されました。(産経新聞)」(2013年11月14日名古屋外国語大学からのメール配信)
  名古屋学芸大学の井形昭弘前学長は2916年8月に急逝されましたが、このメールの時点ではご健勝で、脳死に関するコメントを新聞に書かれました。「井形学長の脳死」ではありません。

▼「エスカレーターの近くで遊んでおられるお子様はたいへん危険でございますのでご注意くださるようお願いいたします」(JR名古屋高島屋の店内放送)
  「手を出すとお子様に噛みつかれる」ということではないでしょう。

  これらは、文を構成している要素(節、文節など)の間の修飾関係の問題です。他に、「その時大切な人を守るのはあなた」(防災標語)、「みるみる美しくなる歩き方に大感激」(美容の広告)など、頻繁に見られます。

▼「きれいな車内作り」
  上の二つのタイプが混じっています。もちろん、「車内作りがきれいだ」ではなく、「きれいな車内を作る」です。

  こういったあいまい表現は、「‘常識’で考えればわかる」ということで見過ごされることが多いでしょうが、場合によっては、誤解され、コミュニケーションの障害になることもあります。ことばを正確に使うということに、もう少し気を使ってみてもいいのではないでしょうか。

▼“Macbeth shall never vanquish'd be, until Great Birnam wood to high Dunsinane hill shall come against him.”〔バーナムの森がダンシネインの丘に向ってくるまでは、マクベスが打ち負かされることはない〕(Shakespeare‘Macbeth’)

  シェークスピアの有名な「あいまい表現」で、この戯曲の重要なモチーフになっています。マクベスは,「そんなことはありえないから、自分は無敵だ」と思ってしまったが、森の木々の枝でカモフラージュした軍隊が押し寄せてきて、本当に森が攻めてきたように見えた、つまり、負ける時は来るという予言だったのだという‘高等あいまい表現’でした。

  場合によっては、「ことばを濁す」ため、「言質をとられない」ためにあいまいな言い方をすることも必要かもしれませんが、率直で友好的なコミュニケーションを損なうような「あいまいさ」は避ける努力をしたいものです。

(日本語学科 中道真木男)

今月のチャレンジ 「言語と言語行動」 

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  今月のチャレンジは、「言語と言語行動」についてです。以下の(1)(2)が問題です。

  (1)インドネシアの留学生の作文に「家の私はジャカルタにあります。」と書いてありました。これはどう言いたかったのでしょうか。また、なぜこのような言い方になったのでしょうか。

  (2)アメリカへ向かう飛行機の中で、日本人の女性がキャリーバッグを棚に上げようとしていたら、アメリカ人の男性がさっと飛んで来て上げてあげました。女性は「I’m Sorry」と言って恐縮していましたが、男性はちょっとびっくりしていたようです。なぜ、男性はびっくりした様子を見せたのでしょうか。

  (1)、(2)のどちらかだけでも結構です。解答を送ってください。お待ちしています。

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