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= 竹ノ山 の タケノコ 通信 =
〔第50号 2017年10月12日〕


今月の話題 「ポップカルチャーと文化政策」

第49回、9月のチャレンジは、日本のポップカルチャーが、隣国の韓国で、1998年まで公に受け入れられてこなかったことを話題として取りあげました。そして、読者の皆さんには、日本に一番近い国である韓国で、なぜ「日本大衆文化の開放政策」という文化政策が打ち出されたのか、そして、なぜ1998年という時期に政策を公表したのか、この二点をお尋ねしました。

現在、韓国では、若者を中心に日本のポップカルチャーに関心を抱く人たちが大勢います。コミック本の『ワンピース』や『NURUTO−ナルト』は日本のポップカルチャーを支持する人たちの中では有名ですが、そのような日本の有名な漫画やアニメーションへの接触をきっかけに、アクション系のものから恋愛系のものまで、幅広いジャンルを楽しむようになったという人たちもいますし、人気小説家の小説にも興味を持ち始め、読書に没頭するようになったという人たちも少なくありません。
韓国のポップカルチャーの流行を「韓流」と表し、日本のポップカルチャーの流行は東南アジアや東アジアを中心に「日流」と表されています。これらの言葉にも見えるように、日本と韓国のポップカルチャーは、双方で日常的に親しまれていますが、韓国で日本のポップカルチャーを自由に楽しめるようになったのは、実は長い歴史から見ると、そう昔のことではありません。そう言える一つの理由に、ここで取りあげる「日本大衆文化の開放政策」が打ち出されたことにあります。

政策が打ち出された1998年、韓国では金大中(キムデジュン)が大統領でした。90年代に入り、韓国では民主化を求める市民の声が絶頂に達し、政治も経済も、そして文化も、すべての分野において、国民を主権とする民主主義の在り方を検討しようとする動きが高まっていました。その背景には、日本の植民地支配の解放から、不安定な社会情勢をなんとか立て直し、経済復興を遂げなければいけないという国の方針に対し、現実的には軍事独裁体制の下で、人々の文化生活が操作されてきたという状態がありました。漫画や雑誌、テープやレコード、CD、ラジオから流れる歌謡曲など、「楽しさ」「新しさ」「親しみやすさ」といった感覚から、「非日常的」で「刺激的」といった感覚まで、人々の心を大きく動かしたり、引き寄せたりする目に見えない力が働くポップカルチャーという文化は、民主化を求める市民にとっては魅力的なものであっても、その市民を従わせようとする政府にとっては、それらは扱いにくいものであったのです。

このような背景から、韓国では、国内で制作されたポップカルチャーや、海外から持ち込んだ(あるいは持ち込まれた)ポップカルチャーを公の場でどう扱うのか、人の心に刺激を与えるポップカルチャーの受け入れを「規制」するための文化政策が、60年代から本格的に打ち出されるようになりました。日本の植民地時代の経験を持つ韓国において、「非日常的」で「刺激的」、「楽しさ」「新しさ」「親しみやすさ」のある日本のポップカルチャーを自由に扱うことは、文化関連法という法律の下で、許されなかったのです。

文民政権の樹立後、90年代の半ばに韓国では、自国の文化力を高めていこうとする動きと合わせて、日本の文化を肯定的に捉えていこうという動きが高まっていきました。そして、2002年には、サッカーワールドカップを日韓が共同で開催することが決定しました。この出来事は、両国のスポーツの振興を高めていくと共に、日韓が映画を共同制作したり、両国の歌手が一緒に音楽を手掛けたりと、ワールドカップの共同開催に向けて、文化的な交流が増え、日本と韓国の文化関係を一歩前進させることになりました。

1998年という年は、サッカーワールドカップの共同開催が決定した年(1996年)と、共同開催の年(2002年)の中間の時期です。この年、韓国では「日本大衆文化の開放政策」の他に、「世界化」(セゲファ)という政策が打ち出されました。この政策は、経済や産業など様々な分野での発信力を高めていこうとするもので、その一つに文化力がありました。韓国が自国の文化力を高めていく上で、隣国である日本との文化関係を開放し、ポップカルチャーを通じて交流できる環境を整えたことは、文化政策としては大きな意味を持っていたと思います。それは、ポップカルチャーをめぐって、交流の場を広げ、魅力を発信・受信していく関係の中で、たくさんの可能性を打ち出していくことができるからです。学内で、K-popをきっかけに韓国の文化や社会を知りたいと思うようになったという学生と話をすると、ポップカルチャーという文化を通じた可能性があるということを、改めて感じます。

1998年という年は、韓国にとって、自国の成長を促すという意志表明の年であり、また、2002年の日韓ワールドカップ共同開催に向けて、日本との文化的な関係への可能性を広げようとする大きな年であったといえるでしょう。

今、私たちの日常には、たくさんの選択肢があります。好きなドラマを見て、好きな小説を読んで、好きな映画を観に映画館に足を運んだりします。しかし、このような日常的なことが当たり前にできないとすれば、皆さんは、好きなことをどのように実現しますか。仕方がないといって諦めてしまうのでしょうか。あるいは、好きなことなら手段を選ばずに、手に入れようとするのでしょうか。

ポップカルチャーという文化は、人の心を刺激する力があるのだと思います。でも、手に入れたい、楽しみたいと欲する側の気持ちを「政策」という強い力で制御すれば、そこに不自然な状況が生まれてしまいます。「日本大衆文化の開放政策」は、文化を楽しむという、本来の自然にあるべき環境を、改めて考え直すことへと繋がった政策であったといえます。

皆さんが外国のポップカルチャーに興味を持った時には、ポップカルチャーの内容だけではなく、ポップカルチャーの魅力を発信する側と、その魅力を受信する側との文化的あるいは外交的な繋がりについても、是非考えてみてください。

(日本語学科 齋藤絢)

今月のチャレンジ 

★ このメルマガでは、毎号、日本語・日本文化、日本語力、国語教育、日本語教育などについての課題を出題します。解答を考えて送ってください。タイトルを「10月のチャレンジ」として、解答のあとに、お名前と所属を書き添えてください。
★ 送り先は、takenoko_re□@nufs.ac.jp(実際の送信時には□を省き、続けて入力してください)です。
★ 次号で、送っていただいた解答のうちおもしろいものと解説を掲載します。

 第50回、10月のチャレンジは、日本語のアクセントの問題です。

日本語のアクセントは地域によって大きく違います。今回は東京式アクセントについて考えます。

【質問1】東京式アクセントでは、単語の一拍目と二拍目は音の高さが違います。箸(ハシ)は○高○低、橋(ハシ)は○低○高です。では、端(ハシ)のアクセントは箸と橋のどちらのアクセントと同じですか。

【質問2】次の12の地名をアクセントの観点からグループに分けてください。いくつのグループに分かれますか。

  青森、秋田、山形、福島、新潟、富山、神奈川、岡山、広島、愛媛、熊本、鹿児島

【質問3】上の12の地名に「県」をつけて、「青森県」などと発音すると、アクセントはどうなりますか。

以上の3つの質問をもとに東京式アクセントにどんな規則があるか、考えてみてください。今まで気づかなかったアクセントの規則性にいろいろ気づくことでしょう。

★ あなたのお答えをお待ちしています。
★ ご意見、ご希望、ご質問もお寄せください。
★このメルマガでは、毎号、日本語・日本文化、日本語力、国語教育、日本語教育などについての課題を出題し、翌月号で皆様に送っていただいた解答の中のおもしろいものを紹介しながら、解説します。

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