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= 竹ノ山 の タケノコ 通信 =
〔第49号 2017年9月14日〕


今月の話題 「格助詞の『を』」

第48回、8月のチャレンジは、格助詞の「を」についての問題でした。「を」を含む例文を10文挙げましたが、「を」の意味の違いに注目してこれらの例文を2つのグループに分類してみようというものでした。また、なぜそのように分類したのかを説明してくださいとお願いしました。

「場所をあらわす名詞」がたくさんあることに着目してくださった方,出題者の意図をよく見抜いてくださいました。格助詞というのは、名詞の後ろについて、その名詞と述語との関係を表す語ですから、「を」がどのような名詞の後ろについているかを考えることが大切です。

「場所を表す名詞+を」のグループ
  (3)店の前を通る。
  (5)ふたつめの角を曲がる。
  (6)東名を走る。
  (8)太平洋を渡る。
  (10)目的地を通り過ぎる。

「(場所以外の)人やものごとを表す名詞+を」のグループ
  (1)友人の誕生日を祝う。
  (2)図書館で本を借りる。
  (4)話題の映画を見る。
  (7)急に名前を呼ぶ。
  (9)お弁当を買う。

ところで、ここに挙げた例文をグループごとによく見ると、もう1つ気づくことがありませんか。まず「場所を表す名詞+を」のグループから考えるとわかりやすいかもしれません。

(「答えは来月号で!」というのももったいぶりすぎですから、少しスペースを空けましょうか。考えたらスクロールしてくださいね。)











例文の述語に注目してみましょう。述語というのは、「場所を表す名詞+を」のグループでは「通る」「走る」「曲がる」「渡る」「通り過ぎる」の部分ですね。これらはすべて、移動を表しています。もう少し正確に言うと、例えば (3)の例文には、省略されていますが本当は「太郎が店の前を通る」のように動作の主体「太郎」がいて、その主体「太郎」が移動することを表す述語が「通る」という動詞です。そして「店の前+を」(ヲ格)が表すものはその主体の移動の通過点です。このほか (5)(6)(8)(10)についても同様で、述語は主体の移動を表し、ヲ格「ふたつめの角を」「東名を」「太平洋を」「目的地を」は通過点です。

一方「人やものごとを表す名詞+を」のグループの述語は「祝う」「借りる」「見る」「呼ぶ」「買う」です。このグループの例文も、省略してありますが本当はたとえば (1)には「花子が友人の誕生日を祝う」のように動作の主体「花子」がいて、その主体「花子」が何かに対して働きかけることを表す述語が「祝う」という動詞です。そして「友人の誕生日+を」(ヲ格)が表すものはその主体の働きかけの対象です。このほか (2)(4)(7)(9)についても同様で、述語は主体の何かに対する働きかけを表し、ヲ格「本を」「話題の映画を」「名前を」「お弁当を」は働きかけの対象です。

少し話が変わりますが、ここで自動詞と他動詞ということを考えてみましょう。「祝う」「借りる」「見る」「呼ぶ」「買う」は他動詞です。

他動詞の説明をする際、一般的にはまず次の (11)(12)のような自動詞文と他動詞文のセットを示します。

  (11)ドアがあく。(自動詞文)
  (12)次郎がドアをあける。(他動詞文)

(12)の他動詞文「次郎がドアをあける」には「ドアを」というヲ格があります。これがもしも「次郎があける」という例文だったら「何を?」と尋ねたくなりませんか。ヲ格が必要なのが他動詞です。一方 (11)の自動詞文「ドアがあく」にはヲ格がありませんが、特に「何を?」と尋ねたい気持ちになりませんね。このように、ヲ格を必要としないのが自動詞です。先ほどの「人やものごとを表す名詞+を」のグループの述語「祝う」「借りる」「見る」「呼ぶ」「買う」も、ヲ格が必要ですから他動詞ですね。

私自身も文法入門の講義で自動詞と他動詞をこのように説明しますし、受講生の皆さんにもすんなりと納得していただけることが多いように思います。けれども、いろいろと考えてみると自動詞と他動詞の区別というのは案外複雑な話で、「ヲ格が必要なのが他動詞」というような説明だけではあっという間に行き詰まってしまいます。

実は、行き詰まりにつながる例文の代表的なものが、今回のチャレンジで挙げた、主体の移動を表す動詞と「場所を表す名詞+を」のパターンです。 (6)の「東名を走る」という例文の「東名を」は、「走る」という動詞にとって必要な、省略すると「何を?」という気がする要素でしょうか。「太郎が走る」「私は健康のために毎朝走る」のような例文にしてみるとどうでしょうか。あるいは (8)の「渡る」はどうでしょうか。「太郎が渡る」「左右をよく見て渡る」のような例についてよくよく考えてみると、本来は必要な表現が省略されているような気もしますね。けれども、その「必要な表現」とは何でしょう。「太平洋を」「横断歩道を」のようなヲ格でしょうか。だとしたら「渡る」は他動詞ということになりそうです。いえ、もしかしたらヲ格でなくて「アメリカに」「向こう側に」のようなニ格かもしれません。そうなると「渡る」は他動詞でしょうか、自動詞でしょうか。

答えが気になる方は、いろいろな例文を考えて、それから国語辞典を引いてみてください。国語辞典に書いてあることを鵜呑みにしないで専門的に掘り下げたい方には、以下の参考文献をお勧めします。巻末にある「解説編 動詞の自他を見直すために」を最初に読んでみるとわかりやすいかもしれません。この中の「5.動詞の自他と格助詞」の節に、「場所を表す名詞+を」のことが出てきます。

参考文献
須賀一好・早津恵美子(編)(1995)『動詞の自他』ひつじ書房。

(日本語学科 中北美千子)

今月のチャレンジ

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第49回、9月のチャレンジは、ポップカルチャーと文化政策についての問題です。

皆さんはアニメーションやマンガ、ポピュラーミュージックなどに関心はありますか。ポップカルチャーという文化は、「楽しさ」「新しさ」「親しみやすさ」といった感覚から、「非日常的」で「刺激的」といった感覚まで、人々の心を大きく動かしたり、引き寄せたりする目に見えない力が働いています。

日本のポップカルチャーが流行している国の一つに韓国があります。韓国は日本に一番近い国なので、身近に感じるポップカルチャーが人気なのは、ごく自然なことと考えられるかもしれません。しかし、韓国で日本のマンガを読んだり、アニメーションや映画を観たり、あるいは人気小説家の小説を読んだりすることが公に認められるようになったのは、韓国政府が1998年に文化政策として出した「日本大衆文化の開放政策」が公表されてからのことです。韓国では、なぜこのような文化政策を、1998年という時期に打ち出す必要があったのでしょうか。皆さんのご意見をお待ちしています。

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