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= 竹ノ山 の タケノコ 通信 =
〔第35号 2016年6月9日〕



今月の話題 「今、シャワーを浴びている」と「あっ、財布が落ちている」

第34回、5月のチャレンジは、外国人大学生に、日本語の補助動詞「〜ている」の2つの用法を教えるとき、あなたが先生ならどちらを先に教えるか、またそう考える理由は何かというものでした。

(1) 今、シャワーを浴びているので、電話に出られない。
(2) あっ、財布が落ちている。

もう一度、前回の説明を繰り返すと、(1)は、みなさんもよく知っている進行形です。英語のbe-ingです。この形はインドネシア語にもありますし、他の言語にもあるでしょう。(2)は、日本語教育では、よく「結果の状態」とか「結果の存続」と言っています。つまり、「財布が落ちて、その結果、落ちた状態が続いている」ということです。

実は、正解はありません。根拠がしっかりしていれば、どちらから教えてもいいと思います。一般的な初級の教科書では、(1)を教えて、しばらく経ってから(2)を教えます。習得研究(学習者がどのように文法等をマスターしていくかを調べる研究)でも、(1)が先に習得されるという結果が得られています。その理由として考えらえるのは以下の(a)(b)です。

(a)「今、ご飯を食べています」のほうが「ここに財布が落ちています」より、認知的に把握しやすい。

(b)(1)進行形(「食べています」)のほうが、母語にそれに相当する言語形式(英語ならbe-ing)のある可能性が高く、使い方もほぼ一致すると推察される。一方、(2)「落ちている」の「〜ている」にぴったり対応する言語形式のある言語はおそらく少ない。つまり、他の言語(学習者の母語)では、いくつかの形式で表すことになり、一対一の対応にならない可能性が高い。

まとめると、上記は、「やさしいもの」から「難しいもの」へと教えていくという考え方です。

しかし、実は、「難しいもの」から「やさしいもの」を教えるという考え方もあるのです(詳しく知りたい人は、大関浩美さんが書いた『日本語を教えるための第二言語習得入門』(くろしお出版)を読んでください。)

ある難しい文法項目を教えてそれが習得される(できるようになる)と、同じ種類の易しい文法項目は教えなくても自然と習得されるということが一部実証されているからです。また、もう1つの理由は、学習者は形式と意味を結びつける際に最初は一対一の結び付けをしていくと考えられていて、最初に「ている=進行形」という強い結び付きを作ってしまうと、次の「結果の状態」の「ている」になかなか移れないということです。しかし、逆の順序で、難しい結果の状態、「財布が落ちている」を先に教えておくと、あとで出てきた進行形の「ている」は、学習者の母語にもあるので、簡単に追加で覚えられるだろうということです。

本当は、ここにインプットの量が関係してくると思います。言い換えると、その言語形式をどれぐらい見たり、聞いたりしているかということです。これは、学習者がどのような環境でその言語を学習するか(外国でか、それとも日本でか)によって違ってきますし、メディアが発達した現在では、場所ではなく、むしろその人がどれぐらいアニメなどに親しんでいるかということが影響するかもしれません。私個人的には、日本の普通の生活では、進行形よりも「テレビがついている」「お風呂が沸いている」「ごはん、できて(い)る」などのほうが、進行形よりも頻繁に使われるのでないかと思っていますが、これはその人の生活の仕方に大きく関わるでしょう。留学生の場合、ホームステイでもしない限り、お母さんから「ごはん、できてますよ」とは言われませんよね。

このように、どのような順序で教えるかは、学習者の習得(どのように外国語をマスターしていくか)に関わっており、科学的でもあり、神秘的なことでもあります。ということで、今回のチャレンジは、どちらが正解というものではなく、文法の習得について考えてみるというチャレンジでした。

(日本語学科 田中真理)


今月のチャレンジ

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第35回、6月のチャレンジは、「教える」と「学ぶ」に関わる言葉について取り上げます。

例えば、学習(ラーニング)と教授(ティーティング)とは、どのように異なるのでしょうか。また、最近、コーチングやファッシリテーションという言葉もよく聞きます。これらの4つの言葉(ラーニング、ティーチング、コーチング、ファッシリテーション)の意味を考えながら、下の(a)から(d)に適切な言葉を選んで入れてください。

1.主に社会人教育の分野で、「相手の能力を引き出し、高めること」を目的としたビジネス・( a )が注目されている。

2.外国語の授業は、1週間あたりの授業数が多くなる。そのため、1人の先生でなく複数の先生で同じクラスを教える場合がある。このような教授形態をチーム・( b )という。

3.昔の大学生は、静かに先生の話を聞いてしっかりノートを取り、テストを受けることで良い成績をとることができた。今は、先生が、学生に問いかけたり、学生らに話し合わせたりするアクティブ・( c )を取り入れた授業が増えている。このような授業では、学生自身が、他の発言や参加を促したり、話の流れを整理したりする( d )を行うこともある。

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