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= 竹ノ山 の タケノコ 通信 =
〔第10号 2014年2月13日〕



今月の話題  「留学生の日本語の習得」

第9回、1月のチャレンジのテーマは「留学生の日本語の習得」でした。

日本語の上手な中国人留学生が「足が踏まれた」と言っているのを耳にしました。どうして、このような文が出てくるのでしょうか。外国語の習得にはいろいろな要素が関係するのですが、その1つの要素に、日本語のある現象が関係しているようです。1月のチャレンジ問題をやってみて、それは何か考えてみようというのがテーマでした。

「足が踏まれた」とは、日本人は言いませんね。受身文の習得は難しいのですが、これは、日本語教育で「持ち主の受身」と呼ばれているものです。以下で、まず、「日本語の受身文」について説明します。それから、みなさんからいただいた回答をたよりに、日本語の習得にはどんなことが関係し、何が必要か、考えていきたいと思います。

日本語の受身文

日本語の受身文には、大きく分けて、「直接受身」と「間接受身」があります。

「直接受身」というのは、(1)能動文「ねこがねずみを追いかける」の主語と目的語を入れ替えた(2)「ねずみがねこに追いかけられる」というような受身文です。「ねずみ」に焦点を当てて言うときに使われます。これは英語にも中国語にもインドネシア語にもあります。

一方、「間接受身」では、このような主語と目的語の入れ替えができません。通常は迷惑を受けたと感じた人(動物も?)が新しい主語となって発生する受身文です。今回は、間接受身の一種である「持ち主の受身」を取り上げています。

「持ち主の受身」とは、(3)能動文「犬が私の手をかんだ」に対し、(4)「私は犬に手をかまれた」という受身文です。直接受身なら、(5)「私の手が犬にかまれた」となりますが、日本語としては不自然ですね。中国人留学生が言った「足が踏まれた」(足を踏まれた)も、「手をかまれた」と同じ「持ち主の受身」です。また、「手」や「足」のような身体の一部だけでなく、(9)「弟は電車の中で(すり/誰かに)財布をとられた」も「持ち主の受身」です。このように、「持ち主の受身」では、主語「弟」と目的語「財布」の間に持ち主と持ち物の関係が成り立っています。身体の一部も、その当人にとっては「持ち物」と言えますね。

(1)ねこがねずみを追いかける。【能動文】
(2)ねずみがねこに追いかけられる。【直接受身】

(3)犬が私の手をかんだ。【能動文】
(4)は犬にをかまれた。【持ち主の受身】
  (持ち主)(身体の一部:持ち物)
(5)私の手が犬にかまれた。【?直接受身】

(6)隣の人が電車の中で僕の足を踏んだ。【能動文】
(7)は電車の中で隣の人にを踏まれた。【持ち主の受身】
  (持ち主)      (身体の一部:持ち物)
(8)僕の足が電車の中で隣の人に踏まれた。【?直接受身】

(9)弟は電車の中で(すり/誰かに)財布をとられた」【持ち主の受身】
  (持ち主)                        (持ち物)

送ってくださった回答の1つをご紹介します。

(1)(a) 犬に手をかまれた
(1)(b) 犬にかまれちゃったの
(2)(a) 電車でワイシャツに口紅をつけられたんだ、あっ、隣に立ってた女性にね
(2)(b) 電車でさー、つけられたんだよねー、チョー迷惑

日本語の習得に関係する現象:省略

日本語の主語や助詞が省略されるのは有名な話です。しかし、みなさんも、先回のチャレンジの(1)(2)の(b)をやってみて気がつかれたと思うのですが、上記の回答のように、主語どころか、目的語をはじめ、その他、不要な情報は省略されていませんでしたか。英語ではそういうわけにはいきませんね。日本語には助詞がいろいろあるけれども、実際の会話ではほとんど省略されていることが分かっていただけたと思います。

留学生たちは、初級で「私は犬に手をかまれました」「母はバスの中で財布をとられました」などの「持ち主の受身」を学習します。しかし、やがて、そのような格関係(どのような(格)助詞がつくか)は忘れてしまいます。ちなみに留学生たちの(a)の回答は以下のようなものでした。

(1)
・犬が私の手をかんだ 【能動文】 
・私の手がかまれた 【直接受身】
・手がかまれた 【直接受身】
・私の手をかまれた 【?】

(2)
・隣の女性がシャツに口紅をつけた 【能動文】
・隣の女性にシャツが口紅をつけられた 【?】
・隣の女性にシャツに口紅がつけられた 【?】

何となく、受身を使うということは覚えていても、助詞に関しては忘れてしまったり、応用がきかないようです。これはなぜでしょうか。

回答例の(b)をもう一度見てみてください。日常会話では、助詞どころか、それがつく名詞句自体が省略されているわけですから、留学生にはインプットとして入ってこないのです。インプットとは、目に入ってくるもの、耳に聞こえてくるもので、インプットがないと習得は進まないと言われています。そうだとすると、長い間日本にいても、会話からだけでは、受身文その他の構文の正しい格関係を身に付けるのが難しいのは当然だと言えるでしょう。
 
今回は、日本語の「省略」が習得に関係するということを考えていただきました。言語習得には、また別の要素も関係しますが、これは次回にしましょう。言語習得は未知の世界だと言えます。これから解明していかなければならないことが多いのですが、ちょっと面白そうな勉強だと思いませんか。
(日本語学科 田中真理)

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